経済・景気動向
国内の景気や経済動向は下記の各種指標によって把握することができます。
国内総生産(GDP)
内閣府が年4回発表する、1年間で国内で生産された物・サービスの付加価値の総額を示す指標で、国全体の経済の大きさを表す。
GDPには名目値と実質値があり
- 名目GDP・・・付加価値をその年の価格で合計したもの
- 実質GDP・・・付加価値を基準年の価値に戻して合計したもの
となっており、実質GDPでは、前年を基準年とし、前年からの物価上昇分を差し引いて求められます。
経済成長率
この1年間での国内総生産(GDP)の増加率を示す指標で、経済の規模が拡大する速度を表す。
経済成長率は当期の国内総生産(GDP)から前期の国内総生産(GDP)を引いたものを、前期の国内総生産(GDP)で割ったもので表すことができる。
経済成長率=(当期GDP-前期GDP)/前期GDP
また、名目経済成長率から物価上昇率を引いたものが、実質経済成長率となる。
名目経済成長率ー物価上昇率=実質経済成長率
景気動向指数
内閣府が毎月発表する、経済活動に重要な30の指標を統合した指標で、景気の現状判断や将来予測のために利用できる。
- 先行指数・・・景気に先行して動く指数で、景気の先行きを予測するのに活用できる
- 一致指数・・・景気に一致して動く指数で、景気の現状を把握するのに活用できる
- 遅行指数・・・景気に遅れて動く指数で、景気の事後検証をする際に活用できる
Diffusion Index(DI)
3か月前の指標と比較して、増加した指標を1、横ばいの指標を0.5として合計し、各系列の指標数で割った割合を示し、主に景気の局面や転換期の判定に用いられます。
一般的に、一致指数DIが3か月以上連続して50%を超える状況であれば、景気拡大局面、50%を下回る状況であれば景気後退局面と判断されます。
Composite Index(CI)
各系列内の指標の全月からの変化率を合成し、その合成変化率を前月のCIに乗じて算出し、主に景気変動の大きさを表す。近年ではDIよりCIを中心として発表されるようになっています。
全国企業短期経済観測調査(日銀短観)
日本銀行が年に4回調査・発表する、全国約1万社の企業の経営者を対象としたアンケート調査の結果をまとめた指標で、速報性も高く市場関係者の注目度の高い指標です。
業況判断DI
日銀短観の中でも最も注目される指標で、
業況判断DI=「良い」と回答した割合ー「悪い」と回答した割合
で計算され、この業況判断DIが上昇に転じたときは景気拡大局面、下降に転じたときは景気縮小局面に入ることが多いとされています。
物価指数
日本銀行が毎月発表する、国内企業間取引における商品の価格変動を指数化した企業物価指数(CGPI)と、総務省が毎月発表する、世帯が購入する商品・サービスの価格変動を指数化した消費者物価指数(CPI)があります。
一般的に企業物価指数は為替や原油価格の変動の影響を受けてすぐに変動しますが、消費者物価指数に影響を与えるまでは時間がかかります。
マネーストック
日本銀行が毎月発表する、市中に出回る通貨量の残高を示す統計値です。実体経済や物価の動向と密接な関係を有しているため重要な経済指標とされています。
通貨の範囲に応じて下記の4つの指標があります。
- M1 ・・・・・現金通貨+預金通貨
- M2 ・・・・・現金通貨+国内銀行等に預けられた預金
- M3 ・・・・・M1+準通貨(定期預金など)+CD(譲渡性預金)
- 広義流動性・・M3+信託等+債券等
M1は、決済手段として容易に用いることができる現金通貨と預金通貨の合計を表しています。
M2は、金融商品の範囲はM3と同様ですが、預金の預け入れ先が日本銀行、国内銀行等に限定されています。
M3は、M1に準通貨やCDを加えた指標です。
広義流動性は、M3に「流動性」を有すると考えられる金融商品を加えた指標です。このため、金融商品間の資金の流出入があった場合でも、その影響を受けないといった特色があります。
準通貨
準通貨の大半は、定期預金ですが、定期預金は解約して現金通貨や預金通貨に替えれば決済手段になる金融商品で、預金通貨に準じた性格を持つという意味で準通貨と呼んでいます。
金利と金融市場
金利
金利とは、お金の賃料であり、お金に対する需要と共有のバランスで決定されます。一般的に、金利が低ければ、お金を借りやすくなり、お金を使いやすくなるため、経済が活発になるとされています。
金利の種類
- 無担保コール翌日物レート・・インターバンク市場の指標金利で、日銀の政策金利です。
- CD新発3カ月物レート・・・・オープン市場の指標金利
- 新発10年物長期国債利回り・・長期金利の代表的な指標
- 基準貸付利率・・・・・・・・日銀が民間金融機関に貸し出す際の金利
- 短期/長期プライムレート・・最優遇貸出金利のことで、優良企業への貸付金利
金利の変動要因
1つ目の変動要因は景気です。
景気が良くなる→企業の生産が増える→お金の需要が高まる→金利が上がる
景気が悪くなる→企業の生産が縮小する→お金の需要が減る→金利が下がる
2つ目の変動要因は物価です。
物価が上がる→また値上がりする前に買おうとする→お金の需要が高まる →金利が上がる
物価が下がる→値下がりするまで買い控える→お金の需要が減る→金利が下がる
3つ目の変動要因は為替です。
円安になる→輸入物価が上がる→企業の仕入れ値が上がる→物価が上がる→金利が上がる
円高になる→輸入物価が下がる→企業の仕入れ値が下がる→物価が下がる→金利が下がる
金融市場
短期金融市場と、長期金融市場で構成され、さまざまな金融商品が取引される市場です。
- 短期金融市場・・・・・・・満期までの期間が1年以内の金融商品を取引する市場
- インターバンク市場・・日銀が金利調整を行う市場で、金融機関のみが参加できる市場
- オープン市場・・・・・一般企業や個人も参加可能な短期金融市場
- 長期金融市場・・・・・・・満期までの期間が1年超の金融商品を取引する市場
外国為替
異なる通貨を交換することを外国為替取引といい、外国為替市場で取引されます。その交換比率は為替レートまたは外国為替相場と呼ばれます。
外国為替相場の変動要因としては、各国の経済状況や政策、国際情勢など様々な要因が挙げられます。
2国間の金利差が拡大すると、お金はより金利の高い国に流れて行きます。すなわち金利の高い国の通貨の需要が高まり(=通貨高)、金利の低い国の通貨の需要は下がります(=通貨安)。
2国間の経済状況、とくに成長率の高い国にお金は流れて行きます。すなわち成長率の高い国の通貨の需要が高まり(=通貨高)、成長率の低い国の通貨の需要は下がります(=通貨安)。
2国間の国際収支も為替に影響します。黒字の場合は外国通貨が多く流入し自国通貨に交換(外国通貨売り/自国通貨買い)されるため、自国通貨の需要が高まります(=通貨高)。一方、赤字の場合は、自国通貨が海外に流出(外国通貨買い/自国通貨売り)するため自国通貨の需要が下がります(通貨安)。
金融政策
物価の安定や持続的な経済成長、国際収支の均衡を目的として日本銀行が行う各種の調整のことを金融政策といいます。主な金融政策としては、下記の政策金利操作、公開市場操作、支払準備率操作があります。
金融政策は金融政策決定会合で決定されます。
政策金利操作
日銀が、国内の様々な金利に影響を与えうる政策金利を操作することです。
現在の政策金利は、無担保コール翌日物レートです。日銀は無担保コール翌日物の貸し手として資金を供給したり、借り手として資金を吸収したりすることにより無担保コール翌日物の金利を操作します。
公開市場操作
日銀が国債の売買をすることで、金融機関の資金を操作することにより市場を操作することです。
日銀が国債を買う(買いオペ)→金融機関の資金増→市場に流通する通貨の増加→金利低下
日銀が国債を売る(売りオペ)→金融機関の資金減→市場に流通する通貨の減少→金利上昇
支払準備率操作
日銀が支払準備率を変更することにより市場に流通する資金量を操作することです。
民間銀行は将来の払い戻しに備えて、預金残高の一定割合を日本銀行に預けておく必要があり(準備預金制度)、子の一定割合を支払準備率または法定準備率といいます。
支払準備率を上げる→民間銀行の資金減→金利上昇
支払準備率を下げる→民間銀行の資金増→金利低下