リスクの主要な移転先として保険が挙げられます。ここでは保険全般における概要を説明します。
保険業法および保険法
保険業法
保険会社に対して業務内容を規制・監督するための法律です。保険業法では、保険会社と保険募集の規制しています。
保険契約の締結の代理または媒介を行うことを保険の募集といいます。保険の募集は、保険募集人のみが可能で、保険募集人になるには、所定の試験に合格し、内閣総理大臣に登録の申請をする必要があります。
保険会社が保険の申し込みを承諾し、保険契約が成立することを保険の引受けといいます。
保険法
保険契約の当事者間における契約のルールを定めた法律です。保険契約者等の保護規定の整備や、損害保険ルールの柔軟化、保険料の返還制限などを規定しています。
当法では下記の用語定義がなされています。
- 保険者・・・・・一般的に保険会社のこと。保険契約の当事者の一方として、保険給付を行う義務を負う者
- 保険契約者・・・一般的に個人や法人。保険契約の当事者の他方として、保険契約上の権利と義務を負う者
- 被保険者・・・・一般的に個人。保険事故発生の対象者となる者
- 保険金受取人・・一般的に個人や法人。保険給付を受ける者であり保険契約者により指定される
契約者保護に関する制度
クーリングオフ制度
申込者の意思表示により契約申し込みの撤回、解除を行うことができる制度です。この制度では下記のことを規定しています。
- 保険会社は、契約締結時にクーリングオフに関する書面を交付しなければならない。
- 契約者は上記書面を受け取った日から8日以内に書面で申し込みの撤回、解除の通知ができる。
- クーリングオフに関する書面を受け取らなかった場合、契約者はいつでも申し込みを撤回できる。
ただし、次のような場合にはクーリングオフできません。
- その保険への加入が法律上義務付けられている場合(自賠責など)
- 保険期間が1年以下の契約
- 営業・事業のために保険契約をした場合
- 契約者が法人、財団の場合
- 契約者が指定した場所で申し込みをした場合(ただし保険会社の営業所、契約者の自宅は除く)
- 契約者が事前に日時を指定し、かつ契約の意思を明示して申し込みをした場合
- 保険料を保険会社に振り込みにより払い込んだ場合
- 医師の診査を受けた場合
- 債務履行の担保のための契約(団信保険など)
- 既契約の増額、変更の場合
保険会社の破綻
契約している保険会社が破綻してしまった際に、契約者を保護するため、裁判所の監督下で進められる会社更生手続き、記入庁長官の命令により進められる行政手続きがあります。
保険契約者保護機構
破綻してしまった保険会社の保険契約を継続することを目的としており、国内の生命保険、損害保険会社が強制加入している機構です。
- 生命保険・・・・・・・・・・・90%
- 損害保険
- 自賠責・家計地震保険・・・100%
- 自動車保険・・・・・・・・100%(※) 解約・満期返戻金は80%
- 火災保険・・・・・・・・・100%(※) 解約・満期返戻金は80%
- その他の損害保険・・・・・100%(※) 解約・満期返戻金は80%
- 疾病・傷害保険
- 短期傷害、特定海外旅行・・90% 解約・満期返戻金は90%
- その他の疾病・傷害保険・・90% 解約・満期返戻金は90%
※破綻後3か月は100%だが、3か月経過後は80%となる
消費者契約法
売る側と買う側の情報や交渉力の差がありえます。この格差により、買う側(消費者)が誤認し、不利益を被ったことが認められた際に、契約を取り消すことができるように規定した法律です。誤認に気づいたときから1年、または契約締結から5年までの期間が対象となります。
金融商品販売法
金融商品を販売する業者に対して、金融商品の勧誘方針の公表、価格変動リスクなどの重要事項を消費者に対して説明することを義務付けた法律です。重要事項の説明がなされず、顧客が損失を被った場合、金融商品販売業者に賠償責任が発生します。
金融商品取引法
金利や通貨、有価証券等の価格変動により保険金や解約返戻金の額が支払保険料を下回る可能性のあるような投資性の高い保険商品(特定保険契約という)も規制対象に含まれます。このような保険の販売方法について規制しています。